The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第18章 Cooperation -協力-
小さな音がして、私が小さく声を漏らすと、
ザックは短く言ってドアを押した。
ドアノブのない奇妙なそのドアは、
押すだけで、何の抵抗もなく簡単に開けることが出来た。
「……行くか。」
ザックの、その短い言葉には…
何か強い意志が秘められているように
私には聞こえたのだった。
『……うん。行こう。
ザック、十分に気をつけてね。
何があるか、わからないから。』
「わかってるっての!
何度も俺に命令すんじゃねぇ。」
『…何度言っても、ザックが心配なんだよ。』
不機嫌そうなザックの背中にそう言葉を返すと、
ザックは少しの間固まってから
私を振り返った。
「……その、なんだ……。
あんまり…っつーか、
"心配される"の、全然慣れてねぇから、
お前がそんな顔しても、
俺はどうしたら良いのかわかんねぇんだよ。」
そして、迷いながらも、素直に…
そしてたどたどしく……言葉を紡いだ。
…私の頭に、ザックの手が乗せられる。
……これまで、
何度も、幾度となく…
たくさんの人を殺めてきたであろう、手……____
その手は、
今は酷く頼りなく、優しく、温かい。
ザックもまた、
生きている1人の人間なのだということを、
再び思い知らされた。
「……俺は、お前を守りたい。
例え、それがどんな物からであったとしても…だ。
……だからよ、悠。
……俺、殺しちまわねぇように、すっげぇ我慢するから……
俺のためだけに、笑っていてくれ……____」
あまりにも切なく、悲しげな声音と言葉に、
私の胸が、甘く、切なく…締め付けられた。