The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第3章 Floor B6 ー地下6階ー
…すると、今度は先程のキッチンの食料倉庫のような場所に出た。
……その部屋には、特に変わったものも、めぼしいものも見当たらなかった。
あるのは、消費期限の切れてしまった缶詰めや調味料や食品。
古めかしい食器等で、気になるものもなかった。
次の部屋へ行ってみようかと思ったその時……。
「…悠……。」
『…何?』
レイチェルに呼び止められて、私は歩を止めた。
『…どうしたの?』
何も返答のないレイチェルを、私はじっと見つめた。
レイチェルは、大きな箱を開いて、中をじっと見つめている。
…もしかして、また変なものでも見つけちゃったとか……?
私はレイチェルの方へと駆け寄って、その箱の中身を覗いてみる。
『…ん?』
……だが、その古ぼけた大きな木箱には、未開封のスナック菓子の袋が1つだけ…まるで仲間はずれにでもされてしまったかのように、居心地悪そうにぽつん…と、取り残されていた……。
『…レイチェル。お腹、すいているの……?』
私の問いに、レイチェルは軽く…そして小さく控えめに、首を左右にゆっくりと振った。
『んじゃあ、置いていく…?』
「…ううん。
持っていく……。」
『…非常食ってわけか……。』
「…この大きな箱、私でも入りそうなのに…。
もう、何も入ってないね。」
私が小さく笑って言った。
レイチェルは独り言のように呟く。
それから、レイチェルは大切そうにその大きめのスナック菓子を、自分の鞄に仕舞いこんだ。