The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第17章 Confirmation ー確認ー
「……で、悠。」
『……何?』
「……鍵、見つけたんだけどよ……。」
『……うん?
え、何処……?』
そう言ったザックに訊ねると、
彼は人差し指1本で、
トイレを指し示した。
……うん。
トイレね……。
トイレの便器の中に、
鍵が沈んでいた……。
ザックはきっと、
その中に手を突っ込むのが嫌なのだろう。
明らかに不快そうに顔を歪めていた……。
……と、言っても、だ。
このフロアは水が出ない。
……と、言うことは……。
たぶん、
あの浴槽も、このトイレも……、
このフロアの水周りは全て、
飾りに過ぎない……。
決意をした私は、
利き手ではない方のカーディガンの袖を
ぐっと、たくしあげた。
「っ……。
……あぁ‼くそっ‼‼」
私が手を入れる前に、
ザックの手が、便器の中へと
まるで吸い込まれるように、入っていった。
「うおぇぇえええ‼‼」
『……え、ザック……?
私が、取ってあげるのに……。』
吐き気を催した様子のザックに
私がそっと気遣うように言うと、
ザックが声を荒らげた。
「うるせぇな‼
なんか、嫌だったんだよ‼
……つか、こんなところに置いておくとか、
頭どーかしてんじゃねぇか!?」
ザックは濡れた鍵を握りしめて、
心底不快そうに言う。
……手を突っ込む方が、
よっぽど嫌だろうに……。
私はふっと苦笑した……。