The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第16章 Floor B1 ー地下1階ー
そんな私の想いが届くはずもなく、
ザックは拳を震わせていた。
そんな彼や、私を
嘲笑うかのような口調で、
ダニー先生は更に続ける。
「何も知らず、
君はのうのうとレイチェルの隣にいた。
今だってそう。
悠の隣に、何食わぬ顔で立っている。」
「……お言葉ですが……____」
ダニー先生の声を、全否定するような冷たい声が、
割って入った。
私は、背後に立つ…その声の主を見上げる。
ここで、
初めて……。
気配を完全に消していた、セバスチャンが
口を開いた。
「……ダニエル=ディケンズ様……。
お嬢様のお隣に立っているのは、
いつの時代も……、執事であるこの私でございます。
勘違いを、なさらぬように……
お気をつけください。」
「……うるさいなぁ……。」
すっと目を細めて、
からかうように言ったセバスチャンに、
ダニー先生は苛立ったような口調で言う。
そして、溜息を1つ零した。
「……はぁ…………。
……ザック。
あまつさえ、
レイチェルに"神様"なんて言われて……
君も悪い気はしなかったんじゃないか?」
「……テメェ。
気持ち悪いことばっか言ってねぇで、
わかるように話せ……‼」
声を荒らげたザックに、
ダニー先生は少しの間……沈黙を返した。