The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第16章 Floor B1 ー地下1階ー
私は、
開けていく視界に
思わず驚いて…目を疑った。
『……え。
何、これ……。』
B1のフロアは、
まるで誰かが住んでいる家みたいだった……。
ただ、
明かりなどはなく、薄暗い……。
薄暗い闇色のこのフロアは……、
生活感の断片のような物があるのに、
ひどく冷たく感じられた……。
「マジで、誰かの家みてぇだな……。」
ザックも、
私と同じことを思ったらしく、
小さくそう呟いた。
「……ここにも、
"殺人鬼"がいるでしょうからね……。
気を引き締めて参りましょう。」
私達の背後に立っているセバスチャンが、
顔に微笑みを貼り付けたまま、
静かに言う。
……"殺人鬼"という単語が、
やけに強く……、
生々しく聞こえたような気がした……。
「……まぁ、そうだろーな。
んじゃ、行くか。」
ザックが歩き出すのとほぼ同時に、
セバスチャンも私達に続いて、
エレベーターから真っ直ぐ歩いたところにある
変哲もない、ただのドアを開けた。
そこも、
冷たく、冷めきった部屋だった……。
重苦しい空気が漂う中、
レイがゆっくりと、最後に入ってきた。
その表情は、
先程よりも尚暗く……ひどく青ざめているように見える。