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The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー

第15章 Trial ー裁判ー





『ザ、ザック……?
 1人で歩けるってば……。』


ザックが私を抱き抱えていた。

恥ずかしさがこみ上げて、
私の頬は、一気に熱を持つ。


「……あ?

 痛みが引いたって、
 疲れが消えてなくなったわけじゃねぇんだよ。

 お前だって馬鹿じゃねぇんだ。
 それくらいわかってろよ。」


……ザックが、
今、ものすごく"らしくない"ことを言った。


『……レイの、
 受け売り……?』


私は、思ったことをそのまま口に出してみた。


「……う、うるせぇ……。」


……あ、
図星なんだ。


『……はいはい。
 ……それで、ここはどこ?』


苦笑した私は、
廊下を抜けた後の光景を眺めて、
そう訊ねる。

美しいステンドグラスに、
大きなパイプオルガン……。

パイプオルガンには、真っ黒に塗り潰されてしまったらしい……
楽譜がポツン……と置かれてあった。

そのインクは微かに香りを放ち、
まだ新しい……。


……まるで、
何処かの教会みたい……。


「……B2。
 先程の、グレイ神父のフロアですね。」


セバスチャンが、サラっと言う。


『……え。
 グレイ神父の……?

 彼は、一体何処に……?』

「……何処かへ、
 行ってしまったの。」

『…………そう。』



私は、
私の声に答えてくれたレイの声に、
小さくそう呟いたのだった……。



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