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The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー

第3章 Floor B6 ー地下6階ー





『…レイチェル、ただいま。』

「……‼
 悠、おかえり。
 …何か、見つかった……?」


微笑んでレイチェルに声をかけると、レイチェルは私を振り返って言う。


『んー…。
 特にこれといって気になるものは無かったんだけど……。
 これ。小さな鍵を見つけたんだ。
 ……何処の物かはわからないんだけどね。

 何処の鍵だと思う……?』


私は握っていた手を広げて、レイチェルに鍵を差し出す。


「……確かに、少し小さいね…。
 まだあまりここのフロアを探してはいないから…わからない。」

『…だよね〜……。
 んじゃ、サクサク行きますかね…。

 ……っと…?』


残念そうに言ったレイチェルに努めて明るく言って、歩き出そうとしたその時…。
レイチェルに、服の袖をくいっ…と引かれた。

伸縮性のあるカーディガンは、グィンと伸びて私を引き止めた。


『レイチェル、どうしたの?
 何か見つけたりした……?』


私がレイチェルに振り返って言うと、レイチェルは少し恥ずかしそうに俯いてそっと言った。


「あ、あの……。手、を…。
 私と、手を繋いでほしいの…。」

『え?
 あ、ああ。良いよ。……はい。』


私は一瞬戸惑った。
"手を繋いでほしい"なんて私に言ってくれる人は、今までいなかったから…。

レイチェルの言ったことを理解するのに、ほんの少しだけ時間を用してしまった。

私は、尚も少し恥ずかしそうに俯いているレイチェルの、その小さな手をすくいとった。


レイチェルは弾かれたように顔を上げる。
それから、嬉しそうに微笑った……。


それが嬉しくて、私もつられるようにして微笑んだのだった……。


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