The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第14章 Floor B2 ー地下2階ー
「無理はいけないよ、ザック。
悠も居ることだし、すっかり足も鈍っちゃって……‼」
「あぁ……!?」
嘲笑うかのように、
口角を吊り上げたダニーに、
俺は苛立って声を荒らげた。
「……それに、
よしてくれよ。
僕だって、無傷じゃないんだから。」
「……そのわりには、元気そうじゃねぇか、
おい。」
俺の言葉に、ダニーはふっと笑みを深めた。
「そりゃあ、君とは違うさ。
"あらかじめの準備"も、"その後の処理"も……。」
そんな風に笑うダニーの姿が、霞んだ。
視界が霞んで、あまり上手く相手の姿を捉えることが出来ない。
……くそっ。
こんな時に……。
「……でも、
僕だって必死なんだよ。
寝首をかいてやろうかと思ったのに、
君は目覚める始末……。
散々だなぁ……。
なぁ、どうして……
レイチェルと悠を連れて歩いてるんだ、君が。
そして、レイチェルは今何処にいる……?」
ダニーの声が、徐々に余裕をなくし、
真剣味を帯びてくる。
ダニーをじっと見つめ返しながら、
俺は笑った。
「……お前、それ本気で聞いてんのか?
あいつが何処にいるか、
言うわけねぇだろ。
バカかっ‼」
「……じゃあ、どうして一緒にいるのか……
答えろ。」
「あぁ?
……んなの、レイが俺に殺されたがってるからに
決まってんだろ……。」