The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第3章 Floor B6 ー地下6階ー
『んー……。
特に、めぼしいものは…。
ん?…あれは……?』
壁に裂けたような、縦方向に一直線の隙間が出来ていて、確認しようとハンドライトで照らすと、キラリ…と何かが光に反射するように煌めいた。
……見てみるかな。
『ゔ……。』
確認しようと、壁のその穴に近寄ろうとして、私はたじろいだ……。
そこへ行くための道には、
地面に飛び散った血のような大きな赤黒いシミ……。
微かに鼻をつく、鉄臭い臭い……。
『っ……。
仕方…ないか……。』
意を決して、その場所に足を踏み入れる。
私は、その黒々とした大きくも小さくもない、微妙な壁の隙間に手を伸ばす……。
指先に、ひやりとした冷たく、小さな物の感触……。
『……あ。』
引っ張り出してみると、それは小さな何処かの部屋の鍵だった。
『…何処の、鍵だろう…。
……って、早く戻らないとレイチェルが心配しちゃう……。
それに、気味が悪いし……。
…ん?
あれは、何……?』
急いで戻ろうとしたその時、壁に何かが書かれてあるのが目に入った。
"ここにはフロアごとに"
"似つかわしい者たちがいる"
"その者は自身のフロア以外からは"
"出てはいけない規則がある。"
"そのフロアの者に殺されたくなければ"
"別のフロアに上がるほかない。"
『……?
どういう意味だろ…。』
厳かに力強く、威圧するようなその文章からは、この時の私は何も理解できないのであった……。