The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第13章 Guinea pig ーモルモットー
「……今は、悠の命が危ない。
さっきの女の居た……。
悠が鎖で繋がれていたあの場所の…
あの血溜まりは、全部…悠の血なんでしょう?
……あんなに血が出たら、
本当に死んでしまう……。」
レイの言葉に、
私は返答を詰まらせた。
正直、今はこうして抱かれているのも辛い……。
目が覚めても、
激しい頭痛と目眩に襲われ、一向に治まる気配がない。
身体も、かなり怠い……。
このまま放置していたら、
死ぬことは確実だろう……。
……だったら…____
私は懐から、護身用の拳銃を取り出す。
「……っ!?」
「悠!?」
レイとザックが、息を呑んだ気配がする。
レイは驚いたように声をあげた。
……ねぇ。
そんな顔、しないでよ……。
白金の拳銃……。
それは、母の形見だった。
日本刀は父の形見……。
白銀の銃口が冷たく
ギラリ…と鈍く光り輝く。
……自殺をするのなら、
日本刀より、拳銃の方が良いような気がした。
ザックの腕から半ば落ちるような形で降りて、
私は壁に寄りかかった。
向かい側には、
赤い"B2"の文字とエレベーター……。
……ああ。
もう少しで、
あと少しで……、
地上に出られたのか……。
そんなことを考えながら、
私はそっと……銃口を自身の顳顬にあてがった。
「……お嬢様、いけません……。」
驚いて絶句するレイとザックの2人とは対照的に、
セバスチャンが静かに言う。
それは、
確かに…怒っていた。
感じ取れるかは人それぞれだが…、
勘のいい、普通の人ならば、
肌が粟立って、震えるかもしれない……。
……まぁ、私はそんなことにはならないが……。
『……足でまといになるくらいなら、
今ここで死ぬ。』
私は、彼を突き放すかのように……
静かに言い放った。