The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第3章 Floor B6 ー地下6階ー
…彼女のその不安そうな表情を見て、私の頭の中には1つの"可能性"が浮かび上がってきた……。
…もしかして……。
『…もしかして、ここの薄暗い裏路地は怖い……?』
私がそっと訊ねると、レイチェルが小さくコクリと頷いた。
『……。
そっかそっか。
…じゃあ、レイチェル。私が1人で行ってくるから、ここで待っていてくれる?』
「1人にしないで……。」
そう言うと、レイチェルは少し青ざめた顔で私を見つめながら…私のその薄手のカーディガンの袖口に縋るようにして私を引き止めた。
『……きっと、大丈夫。
大丈夫だから…ね?
きっと、帰ってくるから。』
「……。」
私はそんなレイチェルの頭をそっと撫でて言う。
レイチェルは微かに震えていた……。
『……レイチェル。
ここから出るために、いろいろしなくてはならないようだ。
君が怖いなら、僕がやる。
……だから、待っていてくれる…?』
「……うん。」
彼女の小さな細い手を取ってそう言うと、レイチェルは少し迷っていたがすぐに納得したように1つ頷いた。
『よし。いい子だね。』
「…早く、帰ってきてね……?」
『わかっているよ。』
ふっと微笑んでから、尚も不安そうに言ったレイチェルにそんな言葉を返す。
私は薄暗い裏路地に呑まれるようにその中へと入っていった。
……レイチェルの年相応の部分が垣間見えた気がして…、
この時の私は、ふっと微笑ったのだった……。