The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第12章 Master and servant ー主従ー
「……ザック。
悠が……。」
「……!?
悠……!?
お、お前……なんで……。」
レイの声に半分我に返ったザックがそう呟く。
『……ごめん。
少し、しくじった……。』
自嘲気味に嘲笑ってみせる私に、
セバスチャンは微笑ってみせた。
「……いえ、お嬢様はよく頑張りましたよ。」
……私は、小さく息を吐いて微笑った。
……全く。
この状況で、お互いよく笑えるものだ。
「……あらあらあら……。
感動の再会かしら……?
でも、まぁ、良いわ……。
レイとザックに、良いものを見せてあげる……。」
女性は、階段を途中まで下ってそう言ってから、
再び私の元へ上がってきて、
そっと私の長いワンピースの裾に手を伸ばす……。
『……っ!?』
私に抵抗する力は、もうほとんど残っていない。
……身をよじろうとしても、腕を吊った鎖が、
微かに音を立てて揺れるだけだった……。
顕になる太もも……。
そこには、他の人には見られたくない、
私の秘密があった……。
上に吊るされた腕は、
カーディガンがずり落ちて、利き腕には
黒染めの包帯が見えた。
……やだ。
……やだよ。
……こんなところで暴かれるのは、
怖いよ……____
私は、現実逃避でもするかのように、
グッと瞼を閉じたのだった……。