The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第12章 Master and servant ー主従ー
Side of 悠
「……うふふ。
楽しいわね、悠?」
私は、冷酷かつ愉快そうに笑う女性を睨みつける。
……身体に、上手く力が入らない…。
強がってはいるものの、
続けられた拷問により、
四肢の感覚が麻痺してきていた。
天井から吊るされた手枷が、私の腕を吊っている。
私は、膝立ちのまま力なく項垂れた。
……全く。
こんな罠に引っかかってしまうとは……。
溜息を吐きかけたその時……、
「お嬢様……‼」
低い声が、悲痛とも取れる叫びをあげた。
ゆっくりと頭をあげると、
そこには、驚いたような表情のセバスチャンが立っていた。
「……あら、セバスチャン。
遅かったわね?
あんまり騎士[ナイト]の登場が遅いから、
お嬢様を痛めつけちゃったわ……♪」
「……貴女という人は……。」
呆れたようにセバスチャンは溜息を吐いて、
ゆっくりと歩み寄ってくる。
「……あら、あんまり近寄っちゃ嫌よ、セバスチャン。」
『ゔっ……。』
グッとヒールで抉るように踏みつけられて、
私は小さく呻き声をあげた。
「お嬢様……‼」
セバスチャンのそんな叫びに、
私は眉根を寄せて、力なく首を左右に振った。
……まだだ。
…まだ、手を出すな……。
……セバスチャン……____