The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第12章 Master and servant ー主従ー
「……何がおかしいんだよ。」
「いえ、別に……。」
私を不機嫌そうに見つめてそう言うアイザック=フォスターに、
私はそう答える。
更に私はこう続けた。
「……さぁ、
アイザック=フォスター様。
注射器をこちらへ……。」
右手を差し出すと、
アイザック=フォスターは、
短く、そして敵意のこもったような口調で言った。
「……断る。」
アイザック=フォスターは、
自身の腕の服の袖をたくしあげ、
包帯だらけのその腕に、2本の注射器の針を
迷うことなく刺した。
「……!?
な、何をなさるおつもりですか……!?」
「ザック、待って……‼」
「待たねぇよ。」
止めようとする私や、レイ様をよそに、
アイザック=フォスターは、
その2本の注射器の中の液体を、
1滴残らず全て、体内に注ぎ込んだ……。
ーカチャ…ー
「……開いたみてぇだぞ。」
「……では、参りましょうか。」
「……。」
「……ああ。
さっさと行くぞ。」
静かに呟いた私と、黙ったまま硬直しているレイ様を置いて、
アイザック=フォスターは、先に出ていってしまった。
「……レイ様。
もう、参りましょう。」
「……うん。」
レイ様にそう言うと、レイ様は静かにそう答えて、
鉄格子から離れた。
歩いていくレイ様に私も続くようにして、
その空間を後にする。
……後には、
アイザック=フォスターが放った2本の注射器が
怪しく針を輝かせながら残っているだけだった……。