The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第12章 Master and servant ー主従ー
「……ザック。」
「……おい、注射器持ってこい。
……早くしろ。」
アイザック=フォスターは、レイ様に対して
苛立った声で、半ば命令するような口調で言った。
レイ様がパタパタと駆けていく。
急いで駆け寄ったレイ様が、注射器を渡すと、
アイザック=フォスターは更に続けた。
「おい、お前。
これ、どっちが危ないやつか、わかるか?」
アイザック=フォスターは、2本の注射器を手にして、
それをひらひらと左右に振った。
「……ううん。」
レイ様は、鉄格子を掴んだまま、
困ったように少し視線を下げて、
ゆっくりと左右に首を振って、答えた。
……さて、
そろそろ参りましょうかね……。
私は、頃合を見計らって、
アイザック=フォスターの右側に降り立った。
「っ……!?
な、おま……!?」
「……!?
セバスチャン……!?」
驚いているお2人に、私は静かに言った。
「私なら、どちらかが有毒で、どちらかがそうでないか……、
わかりますよ。
注射器を、お貸しいただけませんか?」
微笑んでみせる私を、アイザック=フォスターは、
睨みつけるように見つめている。
……さて、
どう出るのでしょうね…?
私は微笑みを崩さないまま、
そんなことを考えて、彼を見つめ返すのだった……。