The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第12章 Master and servant ー主従ー
Side of ザック
「……ザック。」
イライラしている俺は、レイの言葉に歩を止めることなく歩き続ける。
すると、
再びうるせぇサイレンが鳴り響き、
俺の耳をつんざいた。
俺は、歩を止めて舌打ちを吐き捨てた。
……またかよ。
《はぁい‼ご機嫌いかがかしら?
それにしても、ここに来るのがずいぶん遅かったわね?
何をしていたのかしら。》
案の定、女が上機嫌にわざとらしく言う。
……相変わらず癇に障る声で。
ーうぉぉおおお__……ー
吐き気がする。
よくわからねぇが、
遠くで、人間の呻き声のような音が、
地を伝って俺の耳に届いてくる。
「……別に、何もしてねぇよ。」
再び歩き出した俺は、適当にそう吐き捨てた。
死体の、腐ったような臭いが、死臭が……、
どんどん強くなっていくような気がする。
女は、尚もテンションの高い声音で続ける。
《あら、そう。
それと、せっかくここを通るんだから、
もう1度訊いてあげようと思って……。
牢獄で、一生を過ごすのはどうかしら?》
女は、さも愉快そうに訊いてきた。
「……だから、
入らねぇって言ってんだろうがっ‼
しつこいんだよ‼
どーせ、ろくなもんじゃねぇってことはわかってんだ。
何度も訊いてくんじゃねぇっ‼‼」
イライラしていた俺は、
女に向かってそう叫んだ。