The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第12章 Master and servant ー主従ー
《あら、つれないわね。
ねぇ……ザック。
私を楽しませてくれる"道具"には、なってくれないのね?》
「あぁ……?
道具、だぁ……?」
俺は、女のその言葉に顔をしかめて、
半ば叫びつつ返答する。
その、"道具"という言葉は、俺の心を逆撫でた。
そんなことを知るはずもない女は、
更に同じテンションで続ける。
《……ええ、そう。 "道具"……____。
でも、勘違いしないでね。
"道具"っていうのはね、"あなた達"のことを言っているのよ?》
女がそこで言葉を切って、
もったいぶるように呼吸をする気配を感じた。
いちいちイライラするようなこととか、
行動ばっかしやがって…。
絶対に殺してやる…………。
俺が胸中で
そんなことを考えているとは知らないであろう女は、
再び言葉を紡いだ。
《……だって、悠とセバスチャンもそうだけれど、
あなた達を見ていると、本当に可笑しいんだもの‼
ずっと見ていたけど……あなた達ってずいぶん変な
"約束ごと"をしているのね?
危うくって、お互いの身勝手を押しつけただけの約束……。
利害は一致しているように見えるけど、お互いが道具に過ぎない。
……でも、
本当の道具はどっちなのかしら……?》
女の笑い声が鼓膜を震わせる。
甲高いその声は、俺を更にイラつかせた……。
……俺が、道具だって言いたいのか……?
「……あ?
どういう意味だ?」
そんなことを考えつつも、
その言葉が上手く呑み込めなかった俺は、
女にそう訊ねる。
すると、女は大げさな声音でこう続けた。