The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第3章 Floor B6 ー地下6階ー
「……悠は、手を上げないの……?」
『あー。うん。
もともと、小さい子が車から見えなかったら困るから手を上げるんだよね……。
だから、私は別に……。』
「……。
…じゃあ、はい。」
言い淀む私に、小さな手が差し出された。
『……ん?』
「……手、繋ごう……?」
真面目な声でそう言うレイチェルは、とても可愛らしくて、まるで天使みたいだった。
『……ふふ。
わかったよ。
……じゃあ、はい。』
手を差し出すと、レイチェルはそっと私の手に自分の手を重ねた。
「……じゃあ、行こうか。」
『……そうだね。
行こう、レイチェル……。』
私達は、繋ぎあった掌から感じられる相手の心強い体温に…。
どうしようもなく嬉しさがこみ上げるのだった……。