The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第10章 Butler ー執事ー
「……じゃあ、アイザック……?」
「…………ザック。
ザックで良い、ザックで。
悠だって、そう呼んでんだろーが。」
レイが首を傾げてそう言うのに対して、
俺は目をそらしてから、呆れたように溜息混じりに言う。
「……わかった。
私、ザックの役に立てた……?」
小さく頷いて同意したレイは、
俺に再びそう訊ねなおした。
「……あぁ。
ちったぁな。
……ほら、もう行くぞ。」
俺は、足を早めながらそう言う。
レイは俺の後ろを小走りになって、ちょこちょことついてくる。
……悠とあの男は、先に行っちまったらしい。
少し落ち着いた頭でそんなことを考えていると……、
『……ちょっと2人とも〜?まだ〜…?
あんまり遅いと、置いて行っちゃうよ〜?』
間延びした緊張感のない悠の声が響いた。
「少し待ってろ‼
すぐに行くからよ‼」
少し遠くで聞こえた悠の声に、俺は叫ぶようにしてそう返答する。
それから、レイに対して小さくこう言った。
「……急ぐぞ。
早くここから出る。
やっと、この土くせぇ場所からおさらばできんだ。」
「……うん。
悠も、待ってるものね……。」
レイも小さく言って、
俺たちは、歩く速度を早めた。
悠と執事に追いついた俺たちは、
B4のエレベーターに乗り込んだ……。