The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第10章 Butler ー執事ー
Side of ザック
…………気に入らねぇ。
俺は何故だか知らねぇが、
あの黒い男が出てきてから、ずっとイライラしていた。
悠にベタベタ……
まるで、見せつけるかのように触りやがって……。
「……ねぇ。」
不意にレイが俺のパーカーの裾をギュッと掴んで、
俺を呼び止めた。
「……あ?」
俺は急なレイの子供っぽい様子に、
少し戸惑いつつも、平静を装いながら返答する。
くんっ…と引かれて、そのまま俺は振り返った。
……レイから紡がれた言葉は、意外なものだった。
「……私、
あなたの役に立てた……?」
レイは低い位置から俺を見上げ、
真剣な声音で訊ねてきた。
「……まず、
2人っきりのときに"あなた"って呼ぶのやめろ‼
……さぶイボが立っちまう……。」
悠がいるとき…
"あなた"では、誰を指すのかわからなくなってしまうから、
3人のとき、レイは俺を名前で呼んだ。
……だが、
2人だけで話すときは、
俺のことを"あなた"と呼んだ。