The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第10章 Butler ー執事ー
肺を満たしたその空気を全て吐き出して使って、
私はその場の空気を震わせた。
『っ……セバスチャンっ‼
私を、殺させるな……っ‼』
「____……Yes,my lord.」
低く、重い声が響いた。
私の頭上に、黒い闇が舞った。
「うわっ……!?」
私は、エディをつまみ上げた長身の男性を見上げた。
『ゲホッ、ゲホッゲホッ……。
セバ、ス…チャン……。
セバスチャン、セバスチャン……。
………………遅い。
もう少し早く来れなかったのか。』
私は不満げな声を彼にぶつけた。
彼は気にした様子もなく、にっこりと優雅に微笑んで言った。
「申し訳ありません。
ここまで来るのに、思いの外、少々手間取ってしまいまして……。」
『……言い訳はいい。』
「……嗚呼。
でしたら、もっとお早くにお喚びくださればよろしかったのに……。」
私が立ち上がって、
身体や衣服……頭髪等についてしまった土や埃を払いながら言うと、
セバスチャンはクスクスと意地悪そうに微笑みながらそんなことを言う。
『……全く…。』
息を吐いたその時……。
小さな声が聞こえた。