The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第9章 Grave care taker ー墓守ー
「っ……‼
レイ、おい…レイ……っ‼
……くそ、聞こえねぇか……。
あいつ、何処まで奥に行ったんだよ…‼」
亀裂に向かって声をあげた私に、
ザックもハッとしてから、亀裂に向かってそう叫んだ。
……しかし、レイからの応答は
何も無かった……____
苛立ったザックは、壁を力の限り…拳でめいっぱい殴りつけた。
私も悔しくて唇をぐっと噛んだ。
そして、思考を脳内に張り巡らせる。
……奥…。
奥って…向かって右手側…。
……だとしたら‼
『……ザック。
もしかしたら、レイはこっちかも。
……来て‼』
ある結論に思い至った私は、
ザックのグッと強く握りしめられた拳をすくい取って駆け出した。
ザックは少しだけ戸惑った様子だったが、
私を信じるかのように私の手を握り返しては、素直に私に続いて駆け出した。
私達は"保存室"へと駆け込んだ。
第1墓場から保存室までの距離は、そこまで長くはないはずなのに、何処までも続く長い長い道に感じられた……。
一気に冷え込んで、少し高くなった体温が失われていく……。
だが、今はそんなことを気にしている余裕はない。
私は一気に奥まで走って、ひび割れた脆そうな壁を叩いて叫ぶ。
『レイ…‼レイっ‼
聞こえたら返事をして‼』
叩くたびに、じんじんと痛みが響く。
壁にぶつけられる手の骨が、軋んで悲鳴をあげている。
脆そうな壁のガサついた感触が、手の皮を剥いてしまいそうだった。
……痛い。
……でも、
レイを失ってしまう心の痛みの方が、
きっと何よりも痛い……。
私は、あの子を失いたくない……____