The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第8章 Device ー仕掛けー
……だが、
いつまでたっても、訪れるであろう衝撃は、訪れてこなかった…。
代わりに、唇辺りに何か柔らかくて温かいものが……。
私は、ゆっくりと瞼を押し上げる。
……それでも、少しの間は何が起こったのかわからなかった……。
離れていくザックの顔……__
掴まれた手首の、優しく温かな感触……__
零れた私の長髪が、ザックの肩にかかってしまっていた……___
『っ〜!?!?』
私は、
ザックに抱きしめられて、唇を奪われたのだ…………__
了承もない、不意打ちに食らってしまった、キス…。
一瞬触れるだけの、子供っぽくて甘ったるいキス……。
初めて……だったのに…………。
それを理解すると同時に、私はザックの腕から逃げるように飛び退いた。
彼の腕にそれほどの力は入っておらず、私はすぐに抜け出すことが出来た。