The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第8章 Device ー仕掛けー
「……これで、終わり。」
ひと仕事終えたレイは、ふぅ…と小さく息を吐いてそう言った。
「……。」
『……。』
私とザックは一言も発さない。
ザックはどうなのかは知らないが、
……私は、考え事をしていた。
__そうか……。
……覚えている箇所と、そうでない箇所が多々ある。
__思い出した。
__私は…………。
おぼろげだった記憶が、輪郭や色を取り戻し、
鮮明になっていこうとしていた。
まさにその時、
「……悠?」
『…っ‼』
私はレイの、私を呼ぶ声で、現実にへと引き戻された。
「……顔が青い。
大丈夫?」
『……え。あ、ああ…。
大丈夫だよ、少し…考え事をしていただけだから…。
ごめんね。心配をかけて……。』
心配そうに私の顔を覗き込んで言うレイに、
これ以上心配をかけたくなくて、私はそう言って笑いつつ誤魔化したのだった。
……きっと、
頭の良いレイのことだから、そんな私の様子に気づいているのだろう…。
尚も心配そうな顔をしていたが、レイはそれ以上私を追求してくることはなかった……。