第8章 Device　ｰ仕掛けｰ

「……だから、
　そこに全部書いてあんだろ……‼」

「……ここに書かれてあるのは、
　貴方の過去。

　私達が知り合ったのは、それよりも後だもの…。」

「……はぁ？
　意味わかんねぇこと言ってんじゃねぇよ。」

『……この書類に書かれたことは、
　"過去"であって、"現在"でも、"未来"でもない。

　ザック、人って変わるものなんだよ。
　レイは、それを言いたいんじゃないかな……？

　ザックのことを、私達はこれから知っていくんだよ。』


レイの返答に苛立ちを募らせたザックが声を荒らげたその時…
私はそっと口を開いた。


「……あぁ？
　…………意味わかんねぇよ……。」


私に視線を向けたザックは、不機嫌そうに言う。
すると今度はレイが、こう言った。


「……別に。
　これは貴方のことが書かれた紙。
　それ以上でも以下でもない……。」


レイが、ザックの言葉を真似て冷静に言った。

ザック自身の言葉を使ったのだから、
こちらが受け取る意味を間違えていなければ、
ザックにはよく伝わるだろう…。

案の定、ザックは不機嫌そうに舌打ちを1つ零して顔を歪めはしたが、
もう何も言葉を発することはなく黙っていた。