The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第8章 Device ー仕掛けー
「……で、そっちは。」
そんな私の心情を知るはずもないザックは、
さして興味もなさそうに、レイが持っていた最後の書類を見つめて言った。
「……こっちは、アイザックって人のことが書かれてあった。
これは、貴方のこと?」
ザックに訊ねられたレイは、
その書類を自身の目線の位置まで上げて、相手の問いにそう答えた。
『……。
これは…‼』
私はその書類を借りて、黙読した。
……確かにそこには、紛れもない、
あの、"殺人鬼"の事が書かれてあったのだった。
ここにもご丁寧に、写真まで添えられている。
唐突に、
ザックがレイに、その大きな鎌を突きつけた。
驚きも怯えもしないレイは、微動だにせず相手をじっと見つめ返した。
「……ああ。そうだよ。
その、アイザック=フォスターってのは、俺のことだ。
お前はそれを見て、どう思ったんだよ。」
ザックは、少しだけ震える声でレイにそう訊ねた。
不安に思った私は、結局どうすることも出来ずにぐっと書類を握りしめた。
「……どう、思ったか……?」
「……ああ。そうだ。
…怖いと、思わねぇのか?」
「……思わない。」
「…………なんでだよ。」
「……だって、私は、
まだ貴方のことをよく知らないから……。」
レイとザック、2人で繰り広げられる会話に、私ははっと息を呑んだ。
よくよく考えれば、そうだ。
私とレイ、私達とザック…。
まだ知り合って間もないはず…。
相手の事も、全く知らない…。