The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第8章 Device ー仕掛けー
「……んで、
そっちには他に何かあったのかよ。」
私の沈んだ思考を遮って壊すかのように、
ザックの声が響いた。
私は自身の思考の世界から現実にへと引き戻されて、俯けていた顔を上げた。
レイは、ザックのそんな退屈そうな態度を気にする様子もなく、自分の合成皮革製の鞄をあさりながら呟くようにして答えた。
「……えっと、
奥のドアの先には資料室みたいな部屋があって…。
……そこには、この履歴書があったの。」
レイは鞄から何やら書類を数枚引っ張り出して私達に指し示した。
「…ああ?
りれきしょ……?」
レイの淡々とした言葉に、ザックがオウム返しに返答した。
「……うん。
"レイチェル=ガードナー"……。
これは、私のことが書かれてある紙。」
レイは抑揚のない淡々とした声音で答えた。
その、彼女の細い人差し指で指し示された1枚の紙には、
"レイチェル=ガードナー"という文字、それにレイの顔写真が貼付されてあり、
何やら細かい字でいろいろ書かれてあるようだった……。
「……りれきしょだかなんだか知らねぇが、
悪ぃけど俺は、字が読めねぇんだ。」
…………字が、読めない……?