第1章 日常生活に魔が差して!?
「あっ、そうだ。俺、店の駐車場に車駐めたんですけどいいですか?明日取りに行きますんで。」
飲み始めて早々水島が七瀬さんに聞いた。
「ちょっと待っててね。店長に聞いてくるね。」
七瀬さんは席を立つと小走りで消えていった。
もうここは別世界だな、と僕は思う。あちこちでネオンが光り、目がチカチカする位痛い。華やかなドレスに身を包んだオネエの方々の笑い声が響く。グラス同士のぶつかる音。上機嫌な声。ここは彼らにとっては天国なんだろうなぁと考えていた。すると、七瀬さんがこちらに戻って来た。
「今、店長に確認したら駐めて置いていいそうよ。明日には取りに来てね。」
「わかりました。ありがとうございます。」
水島は頭を下げた。
「これでみんな気兼ねなくお酒が飲めるじゃん。」
西田がゲラゲラ笑った。
「でも西田と木下は何で来たんだ?」
僕は西田に不思議になって聞いてみた。
「ああ、俺達はタクシーで来たんだよ。」
西田が手でグーサインを作った。
西田と木下は飲む気満々だなぁと感心した。
「さて、まずはビールで乾杯しますか?生4つあります?」
西田が七瀬さんに聞いた。今日の西田は一段と輝いて見えた。
「ありますよ。只今お作りしますね。」
七瀬さんは嬉しそうに席を外して行った。
「それにしても店の人気No.1の子を席に着けるなんて木下もたいしたもんだな。」
水島が感心して腕を組んだ。
「そんなことないですよ。それに七瀬さんって最近人気No.1になったみたいですよ。」
木下は低姿勢で言う。
「なるほどね~。おっ、生が来たぞ。」
西田が目を輝かせている先では七瀬さんがビールが注がれたジョッキを4つ運んできた所だ。
「お待たせしました。」
ドンッ!とジョッキがテーブルに置かれる。
「それではえっと乾杯の掛け声はいつもどうしてるんですか?」
水島が七瀬さんにわくわくして聞いた。
「そうですね。頼まれれば私でもできますけど、お客様がなさるならどうぞという感じです。」
「それでは俺やります。4月から木下が入社してくれました。そして今日の仕事もみんなよく頑張りました。ってことで新入社員と今日の頑張りに乾杯!」
「かんぱーい!」
みんなでジョッキをぶつけ合い乾杯した。
グビグビと勢いよく飲んでいく。
「ぷはー。」