第3章 2人目の死角
サラちゃんは怒っていなかった。むしろ笑顔だった。
サラちゃんと歩きながら僕は七瀬さんのことを考えていた。うっかり忘れて置いて来たなんてなったら大変だ。
「ねえ、手を繋がないの?」
サラちゃんの問いに冷や汗が出る。七瀬さんと鉢合わせたら大変だな。でも断るわけにもいかず頷いて手を繋いだ。
「後でアフターヌーンティーしていきたいなあ。」
「ああ、考えておくね。」
サラちゃんは僕にぴったりとくっついて歩いている。僕は七瀬さんと鉢合わせないように警戒しながら歩いた。
「ここのお店来たかったんだ。入ろうよ。」
僕らは2階の”E hyphen world gallery pd”という洋服屋に入った。中は女性客でいっぱいだった。
《ちょっと背伸び》をキーワードに、デザイン・ディティールにこだわりを 持った遊び心溢れる個性的なアイテムを豊富に展開しているお店だ。
サラちゃんが真剣に洋服を選んでいる。僕はいつ七瀬さんの
所に行こうか考えていた。
「うっ、お腹が痛い。」
「悠真君?またなの?トイレ行ってきなよ。」
「ありが・・・とう。じゃあ。そこのお店にいてね。すぐも戻るから。」
僕はお腹が痛いふりをしてサラちゃんのもとを去った。
はぁはぁ・・・。
サラちゃんが見えなくなると全力で走った。走りながら七瀬さんと連絡を取り、約束の場所へ向かった。
「悠真君、お腹の具合どう?無理しなくていいのよ。」
七瀬さんは心配そうに言った。
「うん、ありがとう。たぶん治ったかな?今の所大丈夫だよ。」
「それじゃあ行きましょうか。」
僕は作り笑みを浮かべ七瀬さんと手を繋いで歩いた。
2階は行きたくないなと思いつつ南畝さんの顔色を伺う。
まずは1階のMUKというセレクトショップに入った。
ここで七瀬さんが色々買って店を出た。
3階のWEGOに行った。
「ねえ、ここで買って行かない?」
「いいよ。」
「シミーラルックしていきましょうよ。」
「何だそれ?」
聞いたことのない単語に僕は不審がった。
「ペアルックみたいに全身じゃなくてワンアイテムだけお揃いにするのね。」
「いいよ。」
僕は思わずいいよって言ってしまったが・・・サラちゃんに会ったら何て言おう。
色違いのトップスを買ってしまった。ああ、なんてことを。
お会計を済ませると僕はお腹が痛いふりをしてサラちゃんのもとへ向かった。