第3章 2人目の死角
「ああそうだな。」
僕も笑顔で言葉を返す。
「へえ~弁当男子とは水島もやるじゃん!」
僕は水島の弁当箱の中を覗き込んだ。一人暮らしにしては手が込んである弁当だと思った。ご飯にふりかけがかけてあり、卵焼きに焼いたウィンナー、そしてキュウリの浅漬けとは大したもんだ。
「弁当男子のふりかけが意外といけてさあ。」
「へぇ~あっ、電話が鳴ってる。何だろう?」
するとそこに僕のiPhoneのマナーモードが鳴った。隣の水島は弁当に手を付け始めていたので僕は背を向けてiPhoneを開いた。
LINEのトーク画面を開くと七瀬さんとサラちゃんからの書き込みがあった!
「集合時間は9時?2人共同じ時間なんてやばいなどうしよう。」
僕は2人に早速返信をした。サラちゃんの場合遅れたら厄介なので先にサラちゃんを優先させることにした。
『七瀬さん、すみませんが少し遅れていきますね。銀行でお金をおろさなきゃいけなくて。』
ポチっと押して返信した。大丈夫だったかな?
「ん?清水ー!食わねえの?」
水島に呼びかけられて背筋がぞくっとした。
「何だよ?そんなに驚くことでもないだろう?早くしないと奥さんのお弁当冷めちゃうぜ?」
「あっ、うん。今食べるよ。」
僕は前に向き直って弁当を食べ始めた。
「それで携帯電話鳴ってたみたいだけど何だって?」
水島がそう聞いて来たのでドキッとしてしまった。
「えっとau WALLETのお知らせだったから大したことないよ。」
「何だ、そんなことか。」
水島は残念そうに言葉を返した。
あれ?僕ってもしかして同僚に嘘をついたんだよな?っていうかもう嘘ついたじゃんかよ!取り返しの付かないことにならなければいいなあ。
それから午後はいつも通り配達に行ってこの日の仕事は終わった。
「ただいま。」
いつも通り家に着く・。
「おかえりなさい。ご飯できてるわよ。先に食べちゃえば?お風呂はこれから沸かす所よ!」
いつも通り莉子はにこやかだった。
「うん。そうするよ!」
着替えてダイニングに行くと豚の生姜焼きがメインの夕食がテーブルに並べられていた。
「生姜は体が温まっていいわよね。」
「そうだな、いただきます!」
僕は味噌汁から口に運んだ。
後で七瀬さんの返事来てるか確認しなきゃなあ。