第3章 2人目の死角
次の日も僕は淡々と仕事をこなしていく。気が付けば4月も終わりに近づいていた。
「早いなあ。」
桜はすでに散っており青々とした木々が5月の風を運んでくれているかのようだ。
午前中はお客様窓口で対応していた。
そしてお昼の時間になり僕は莉子が作ってくれた弁当を机に広げた。
「相変わらず、奥さん思いでいいな。」
西田が羨ましそうに僕の隣に座って来た。
「あっ、西田はコンビニ弁当か。一人暮らしも大変そうだな。」
僕は笑顔で言葉を返した。
「俺もそろそろ彼女作らなきゃなあ。」
西田はそうぼやいていた。
「あははっ。」
僕は作り笑みを浮かべてその場をやり過ごした。その時僕のiPhoneが鳴った。
ブー
仕事中だからマナーモードにしている。
「誰からだろう?」
僕はそう思いiPhoneを見るとLINEからお知らせが来ていた。
「うわぁ、サラちゃんだ。」
それから七瀬さんからもだ。
僕は西田に気づかれないように小声でそう呟くと2人からのLINEトークを見た。
『やっほー!I'm Sarah!今度、私とデートしない?場所はどこがいいですか?』
サラちゃんからはデートのお知らせで七瀬さんからは?
『おひさ~!悠真君、今度の日曜お暇かな?よかったらデートでもいかが?』
ええ?2人同時にデートの誘い!?どうしよう?同じ曜日なんてどっちを断ればいいのかなあ?でも七瀬さんとはデートしたことあるし今回はサラちゃんでいいや。
僕は2人に返事を返して七瀬さんのデートは断り、今回はサラちゃんと行くことにした。すると早速2人から返事が返って来た。
『やったねー!』と喜ぶサラちゃんに対して七瀬さんは少し残念そうだった。
「これでいいんだよな。これで。」
僕が頷いていると西田が僕の顔を覗き込んできた。
「おい!」
「へっ?なっ・・・って西田かよ。脅かすなよ。」
「さっきも呼んだけど聞こえなかったか?もうすぐお昼の時間終わりだぞ。清水さぁ、弁当ろくに食ってないじゃんか。」
「あっ・・・あー?もうこんな時間かあ。」
そう言えばまだ卵焼きしか食べてないことに気が付いた僕は時間を気にしながら慌ててお弁当を片付けた。
LINEに気を取られていてお弁当の存在を忘れるなんて僕としたことが。まぁ、これは自分のした事だから仕方ないか。
さて、問題は日曜のデートを莉子と七瀬さんにバレずにやり過ごすことだなっと、僕は考えた。