第2章 危険な香りが漂って
翌日もいつも通りに僕は仕事に励んだ。
それにしても七瀬さんには注意が必要だな。高額な商品を強制されたら僕だってたまったもんじゃないしな。そういう時はどういうふうに断ろうか?でも、僕の仕事って何してるのか知ってるのかな?普通の郵便局員だからお金もそんなにもらってないしとでも言っておくか。
この日の午前中は資料の作成に取り掛かるためパソコンを開いていた。
カチャカチャッとキーボードを打つ音が静かに聞こえる。そして僕の後ろでは女子達がお客様窓口で対応している。
「あの、石橋局長。オフィスにいる僕らはお客様と直接話してる訳じゃないので挨拶しなくてもいいですよね?」
僕は向かい側で仕事をしている局長に聞いた。
「軽く会釈だけでいいんじゃないか?ああ、でも清水君は背を向けてしまってるから仕方ないのかね?」
「ですよね。」
そんな言葉を二言位発したあとは無言で仕事に取り掛かった。
「ああ、午前中の仕事は終わった!」
丁度12時になり僕はパソコンをシャットダウンした。
お昼を食べ終え午後になり配達へ向かおうとすると丁度雨が降ってきた。
「合羽を着ていくといいよ。」
石橋局長が局員共通で貸し借りしている合羽を貸してくれた。
「ありがとうございます。」
僕は合羽を着てバイクに跨ると雨の中配達へ向かった。
ぶおおーん!と晴れていればバイクの走る音だけがする。しかし今日は雨のためその音も雨によってかき消されていった。
「そういえばここの所雨って全然降ってなかったな。」
最近の天気予報でも晴ればっかりだったからなと思う。まぁ、蛙や植物にとってはありがたいことなのかもしれないが莉子達主婦にとっては好ましくないだろう。だって洗濯物が干せないからね。僕はそんなことを考えながらバイクを走らせて行った。