第2章 危険な香りが漂って
食事が終わると僕はあることに気が付いた。
そうか、これから七瀬さんとデートするのに僕が払わなきゃいけないんだよな。出費が増えるなあ。どうしよう。
お会計を僕がしている間七瀬さんが何をしているのか気になって仕方がなかった。
「ふう~。お会計終わったよ。」
「じゃあ次はショッピング行きましょうか。」
「あっ、うん。」
なるべく人目に付きたくないけど七瀬さんに気を使わせたくないしなあ。
それから七瀬さんはショッピングを楽しんでいく。僕は周りを気にしながら歩いた。
「どうしたの?」
「何でもないよ。」
「ならいいけど。あっ、この靴かわいいわね。」
え?ルブタンの靴?これいくらするんだろう?
「まさかそれ買う気じゃあ?」
「ええ、そうよ。でもこれは自分のお金で買うわよ。さすがにお昼代出してもらってそれはないわよね。」
七瀬さんは笑っていた。
はぁ、よかった。僕は肩の荷ががっくり下りた。
それから暫く色んなお店を見て回って七瀬さんとの初デートは終わった。
「楽しかったわね。」
「うん、こちらこそ。」
何か僕顔が引きつってないか?
「それじゃあまたね!」
七瀬さんはそう言って路地裏の向こうに歩いて行った。
「さて、僕も帰るか。」
時刻はちょうど5時だった。僕は車で帰りがてらトイレに寄ってスーツに着替えて家に帰った。
「ただいま。」
「おかえりなさい。今日は少し早かったのね。」
莉子が笑顔で迎えてくれる。その姿を見ているとなんだか申し訳ない気持ちにはなるがやっぱり七瀬さんはきれいだったなと思ってしまう。
僕は今日は夕食を先に食べた。
「最近、インターネットバンキングの利便性の問い合わせが多くなってきてさ。」
僕は仕事の話をして気を紛らわせた。
「へえ、そうなのね。」
莉子はミトンをはめて大きな器を運んできた。
「それでさ~。えっ?嘘・・・。」
僕は目の前の器を見た。
「そんなに驚くことないでしょう?だって悠真ハンバーグが好きだって言ってたじゃない?だから今日は煮込みハンバーグにしてみたのよ。」
莉子が嬉しそうに僕のお皿にハンバーグをよそってくれている。
そのハンバーグをお昼に食べちゃったんだよ。またハンバーグですか?
ああ、ハンバーグ師匠なら喜んで食べるんだろうけどさすがにこれは胃がやられるなあ。
僕は覚悟を決めてハンバーグを食べ始めた。