第2章 危険な香りが漂って
そしてデートの日当日となった。莉子にはこの日は仕事だと伝えてある。
普通に起きてスーツに着替えて鞄を手に出かけるふりをした。
よし!七瀬さんとの待ち合わせまでまだ時間があるな。僕は公共のトイレに立ち寄って私服に着替えるとまた車に乗って走らせた。スーツは紙袋を持って来ていたのできれいに折りたたんで車の後ろに入れた。
「あー3時間半も何しよう。」
7時に家を出たため結構時間があるなと思った。
僕はとりあえず待ち合わせ場所付近まで来て駐車場に車を停めると亀山書店内へ入って行った。
店内にはたくさんの人でごった返していた。僕は漫画のコーナーへ行き漫画を読んで時間を潰すことにした。
下手にうろうろしていると返ってバレるかもしれないからな。
今はあちこちのお店を回らない方がいいと思ったのだ。
そして約束の時間に僕と七瀬さんは会った。
「お待たせ!」
七瀬さんはこの間会った時はたぶん仕事服だろうドレスを着ていたが今日はワンピースだった。
「あっえっと。」
僕は言葉が詰まって出なかった。
「ねえ、2人の呼び名を決めましょうか。私はなるちゃんがいいなあ。清水君は下の名前は何て言うの?」
「悠真です。」
七瀬さんに聞かれて淡々と答える。
「じゃあ悠真君って呼んであげるわ。じゃあ行きましょうか。」
「うん。」
すると七瀬さんが僕の手を握って来た。元男性とはいえすごく積極的な方なんだと思った。
それよりも同僚の西田や水島、後輩の木下にバレたらどうしようかと思うと冷や汗が出た。
「どうしたの?悠真君?なんか汗かいてない?」
「そんなことないですよ。」
僕は少し俯いて言った。
「やあね。ここからはため口で話さない?いつまでも口が堅いとつまらないでしょう?」
「そうだな。」
僕は笑顔を作り頷いた。
「あそこのお店よ。ランチもやってるけどあそこのかき氷が美味しいのよね。」
僕らはお店の中に入って行った。
「いらっしゃいませ。何名様でございますか?」
店員の女性が明るく出迎えてくれる。
「2名です。」
僕はとっさに答えた。
このお店は店の中で食べる人とテラスで食べる人がいるらしい。
「こちらへどうぞ。」
店員に案内されついていくとテラス席だった。
「わお、おしゃれなテラスでね。」
七瀬さんは嬉しそうに言った。