第2章 危険な香りが漂って
家に帰宅すると僕は平然を装った。
「おかえりなさい。」
莉子が玄関で出迎えてくれた。
「お風呂も沸いてるしご飯もできているわよ。」
「先に風呂に入るよ。」
「わかったわ。」
僕は寝室に鞄を置きに行った。
はぁ、何でこんなことになっちゃったのかなぁ?でも彼女の戸籍の為だ。仕方ないか。付き合うって言われても元男だと考えると少し気が引けるなぁ。
タンスから下着と部屋着を取り出して階段を降りて脱衣所に入る。着替えた物はかごに入れて風呂の中に入った。
ガラ〜
中は湯気でもわっとした空気に包まれた。洗面器にお湯を注いで頭にかける。
ザバァン。
シャンプーを髪につけて洗っていく。
これから上手くやっていくには莉子と七瀬さんとの約束が被らないようにしないといけないな。七瀬さんは僕が結婚してるのを知らないだろうから。もう断る訳にはいかないしなあ。
頭にお湯をかけてタオルで顔と髪を拭いた。体を洗い、髭を剃り湯船に浸かる。
湯船に入ると何だかさっきの事が嘘みたいに思えた。
「よし、頑張ろう!」
暫くして風呂から上がるとバスタオルで体を拭いて着替え始めた。
入浴の後は夕食を食べた。そして食べながら今日の仕事について莉子に話した。
「なるほどね。」
莉子は熱心に聞いてくれる。
そして夕食の後は2人でバラエティー番組を見た。
「良く飽きないねえ。」
クイズ番組でひたすら回答兼を得ようとしている芸人。はたまたチャンネルを変えると中華の料理人が大きな鍋を豪快に振るっていた。
「うわあ、すごいわね。」
莉子が感心して言う。
またチャンネルを変えると蛇の特集がやっていた。
「うわあー私こういうのだめなのよ。チャンネル変えてくれる?」
「わかった。」
そしてチャンネルを変えると芸人の自宅ドッキリ訪問がやっていたので暫く2人でそれを見ていた。
僕はテレビを見ながら考えていた。
七瀬さんは言っていたよな?戸籍を変えたいから協力して欲しいって。でも戸籍が女性になれば彼女との関係もなくなるんじゃないのか?いや、好きですって言われてるのにそれはないだろう?まさか不倫じゃないよな。でも恋人かあ。そうだよな、僕は世帯主なのに何やってるんだろう?七瀬さんとのお付き合いと莉子との関係をどう保つか悩んでいた。