第2章 (白)意識触れ始め
「鬼灯さんはあれで案外優しいんですよ。仕事で失敗しても面倒くさがらずに尻拭いしてくれるし、もちろん仕事も凄くできるし、オンオフのけじめもちゃんとしてるし。…貴方と違ってね」
「 璃々ちゃんひどい! 」
尻拭い、に反応される前に先手を打ってやった。だらしなく寝そべっていた体をがばと起こし嘆く白澤さんをよそにして、鉢で薬草をごりごり削る私。
そんな私を頬杖つきながら見つつ、白澤さんはぽつりと呟いた。
「僕にしとけばいいのに」
「なんですかそれ」
拗ねたような口振りにちょっと笑いが漏れる。白澤さんの女好きは天国から遠く地獄まで知れ渡っていて、まあ鬼灯さんが広めてるわけなんだけど、だからそんな色のある言葉を言われてもどうにも冗談に思えてならない。
また私をからかってるんだろうな、と文句を言ってやろうとして顔を上げた私は、そのまま固まった。
「………」
「僕にしなよ、 璃々ちゃん」
切れ長の目、何でもないような声、その合間でこちらを見詰める瞳はどこか真剣味を帯びていて。
「だからここに呼んだんだしさ」
なんだか息が詰まった。
2013/7/12