第6章 _____名
「熱あるみたいだけど…体調、大丈夫なの?」
「えっ………あ」
ほんわか和んでいるうちにその事がすこんと抜けてしまったようで、私は瞬いた。
そうだ。そもそもなぜここにいるのかと言えば刑事さんが傘を貸してくれようとした時に私が倒れてしまったからで、道端に倒れたのに場所が変わっているのは刑事さんが運んでくれたからで。
それに行き着くと、急に恥ずかしくなって私は赤くなった。
雨も降っているのに傘をさしながら私を運ぶのは大変だっただろう。
「す、すみません…ご迷惑おかけして」
「や。気にしなくていーから。拾ったのが俺で良かったし」
昨今は危ない人多いからね、という声を聞きながら。
そうはいっても事態を省みれば省みるほど恥ずかしさは倍増なわけで。
「そーいや、名前」
「…え?」
「君の名前、教えて」
「あ…未来です」
「…未来ちゃん」
噛み締めるように言われてまた顔が熱くなる。
下げた視線の先に開けたシャツの合間の白い肌と鎖骨が見えて、更にうつむいた。