第9章 ________違
何で急にそんな事聞くの、と刑事さんは尋ねてきた。
「明日からあそこでバイトする事になったんです」
「バイトねぇ…」
「私じゃあまり役に立たないと思うんですけど、ネウロさんが明日から来いって」
刑事さんはそれから何を考えているのか黙ってしまったが、やがて目の前の信号が赤になり車を止めると、こちらを見た。
「あそこの探偵とはよく会うから、また会うかもね」
「そうなんですか?」
「何でかな…事件起きて現場行くと、よく会う」
探偵の直感かね、と呟いた刑事さんは、信号が変わって車を走らせる。
なんだろう、ちょっと嬉しいような。また刑事さんにも会えるんだ。
窓から見える人、車、自転車。あの人たちの誰もが私の事なんか少しも知らなくて、こんな境遇に陥ったなんて知らないんだろうなと、急にそんな事を考えて。
考えながら外を見ていると、不意に車が止まった。
2009/08/22