第7章 ______雇
「貴様をここの下僕…いや手下…違うなバイトに雇ってやる」
「………」
「貴様の顔は人間どもに警戒心を抱かせにくい。我が輩にとっては実に便利なものだ。…これが何を意味するかわかるな?」
牙のような歯をちらつかせながら言われて、「わかりません」と言える勇気のある人がいるんだろうか。少し考えるとその問いの答えにはすぐに辿り着いたので、素直に私は頷いた。
彼は満足そうに笑んで続ける。
「貴様が人間どもの警戒心を抱かせず接する事が出来るのなら、我が輩もこのウジ虫も格段に動きやすくなる。謎への接近など思うがままだ。我が輩直々の招待だぞ。光栄に思うがいい」
光栄かどうかはわからなかったが、今話題沸騰中の探偵と共にいられるのは確かに光栄なような気がした。
別段他に何かバイトをしているわけでもないし、断る理由はない。
興味がいつの間にか心を埋めている。彼らに対して尽きない探究心を、「バイト」という役場は十分埋めてくれるだろう。
そして一番の理由。
断ったとして、私は無事でいられるかどうか。
だから私は、ほとんど抵抗という抵抗をせずに、唇を開いた。
「宜しく、お願いします」
その答えにネウロは悠然と笑む。
「宜しい。物分かりが良いようだ。明日学校が終わったらすぐに来い」
いいな、と念を押され、それに私が頷いた時、廊下から靴音。
間もなくしてドアが開き、刑事が戻ってきた。
2009/06/13