第7章 ______雇
何なんだろうここは。何なんだろうあの刑事さんは。
無条件すぎる優しさに、私はただ戸惑うばかりで。
「甘えといた方がいいと思いますよ。まだ、顔色あんまりよくないし」
女子高生さんが身体をかがめて私と視線を合わせる。
そこでようやく私は、彼女が最近有名な女子高生探偵の桂木弥子だと気付いた。
「あ…、でもこんなに迷惑かけて…」
「笹塚さんは本当に迷惑だなんて思ってないと思う。それよりも風邪こじらす方が大変だからさ、今日はしっかり甘えといた方がぶふ!」
笑顔だった弥子ちゃんの顔が沈んだ。その頭をがっしと掴むのは、青いスーツの美形さん。
「雑音は黙っていろ。我が輩は未来に用がある」
「…や、弥子ちゃん大丈夫…?」
「気にするな。この程度で死ぬ人間はいない。それよりも未来」
「は、い」
人をわしづかみにするような瞳が、気づけば至近距離にあった。硬直。
深い深い底無しを思わせる目に唇が震える。
捕食されそうな動物の気持ちってこんな感じなのかな。近すぎて逆に引けなくて、捕われたようにぞっとする程端正な顔を見つめた。