第5章 24~
不意に嫌な予感がした。家に鍵をかけたかわからなくなってしまった時のように。
不意に嫌な予感がした。
違うよね?でももしそうだったら。
そんなはずは。
嫌な予感。
僅かに焦り始めた乃芽の気持ちに色をつけるように。
要は淡々と言った。
「任務放棄。謀反。理由のない逃走。罪人。罪人の隠匿。情報漏洩。スパイの疑い」
「………」
「罪人、乃芽。それを匿ったとして、万事屋の3人と真選組の近藤、土方、沖田の3人を、逮捕するよう言われてる」
「…!」
「なんつーのは表向きで、実際は抹殺命令だ。お前も今までやってきたからわかってんだろ?何も知らないと言い張っていても何か重大な秘密を知られたかもしれない。"無かった事に"してこいとさ」
無かった事。それはお庭番衆の間で使われる隠語の一つだ。
情報漏洩?そんな事あるわけがない。
お庭番衆の一人籠三乃芽は逃げなかった。万事屋は罪人を匿わなかった。真選組は罪人を匿わなかった。
なぜなら、そんな人間は最初からこの世に居ないから。
全てを無かった事にする仕事。
それが、無かった事にするということ。