第5章 24~
「俺はお前を許さない」
すったもんだの末、会議室に着いて総悟が出て行き要と二人きりになる。
席についた彼は開口一番にそう言った。
「これは裏切りだ。天人と、俺に対する」
「違うって言ったって聞かないくせに」
乃芽は要の正面に座った。さほど広くない会議室で椅子も7、8脚しかなかったが、要と自分との距離は大分離れているように思えた。
「天人と地球人の共生を望んで、そうしてくれるはずだと幕府を信じて、幕府を守るお庭番になったんだろ。それを投げ出して、裏切りと言わないならどう言うんだ」
責めるように、吐き捨てるように言う要。乃芽は冷めた気持ちで彼を見ていた。
彼は天人と地球人のハーフだ。それも最強戦闘種族の一つである夜兎とのハーフ。
天人は地球人を蔑み、地球人は天人の強大さに脅えながらも侵略に憤っていた時代に生まれた。
要のような子供がいる事が知られれば即座に殺される。天人からも地球人からも謗られる事は目に見えている。
それでも要は、望まれて生を受けた。
しかし、両親はすぐに攘夷戦争で死んだ。
侵略する者とされる者の戦いだ。二人は天人と地球人のどちらの味方にもならず、裏切り者と呼ばれながら殺された。
要は直前に遠い孤児院に預けられ命を救われたが、孤児になった。
「天人と地球人の共生、ね…」