第5章 24~
ふう、と息が漏れる。説明できるならしてくれと視線で訴える土方に、笑みを向けた。
「ごめんね。巻き込んだ」
「いや。それはいいが…ありゃお前の部下じゃなかったか。確か…」
「そう。半分天人で半分人間のね」
「あいつも一緒に連れて逃げなかったのか」
「うん」
「なんでだ」
乃芽は目を伏せる。
半分天人の要。いくら天人がはびこる世の中になったといえど、人間でないものを嫌う人はたくさんいる。だからそれは弱みになるし、強みにもなる。
「色々、あって」
「………アレ、まだ言ってねぇのか」
「うん」
陽空要の子供時代。乃芽の過去。鈍色の空。暖かさをぬるく含んだ五月雨。
濡れる身体。滴る滴。獣の視線。罵倒。
「言うつもり、ないから」
自分との約束だ。破るわけにはいかない。
例え、それが状況を悪化させる事になっても。
悪化した状況に翻弄されても。
「俺は賛成できねぇけどな。あいつももう餓鬼じゃねぇんだ。自分から進んで背負うこともないだろうが」
「決めたからいいの」
消えなければならない事になったとしても。
本望だ。
2008/09/22