第4章 20~
「おら、着いたぜ」
「わー…変わってませんね」
「当たりめーだろうが。お前最後に来たのいつだったよ。2週間くらい前だろ」
「そうでしたっけ」
背負うものを一つ捨てた乃芽にとっては、2週間前も1年前もさほど変わりのないように思えた。
2週間前と同じように門を潜り、廊下を歩き、襖を開ける。
懐かしい、とさえ思う。
土方に先導されて入った部屋に誰もいないのを見て、乃芽は首を傾げた。
「近藤さんは?」
「お偉方んとこだよ。会えないのを残念がってた」
「私の事言ったの?」
「ああ。隠しても仕方ねーだろ」
何でそんな事聞くんだと言いたげな口調に、乃芽は微笑んだ。
城を抜け出し、万事屋に落ち、世話になり、女中になる事にし。
全て告げられ、それでも尚受け入れる寛容さ。
叱るでも褒めるでもなく、ただいつもと同じように。
それにどれだけ救われるだろう。
「女中っても、そうほいほい雇ってるわけじゃねえからな。とりあえず書くものだけ書いてもらうぜ」
土方が示す先には木製の机の上に紙とペン。乃芽は座布団に座り、それを眺める。
「名前は偽名にしとけ。一応な」
「わかった」
そう言い、ペンを握った瞬間。