第4章 20~
その日は朝から気分が沈んでいた。
原因は夢だ。神楽が家中の食べ物を食べ尽くして食料が空になり、新八と私は何日も食べない状態が続き、銀時は行方不明で神楽は更に「お腹空いたアル」と喚き立てる。
そんな妙にリアルでげんなりする夢を見て、乃芽は起きる気を少しなくした。
だがすぐに、今日は真選組屯所に行かないといけないのだと気付き起き上がる。
そう早くない時間のはずだが銀時は起きておらず、神楽も寝ている。
そして乃芽がどこで寝ているかというと。
「………何か甘ったるい空気が漂ってる気がする」
銀時が普段寝ている寝室だった。
乃芽はソファでいいと言ったのに銀時が聞いてくれなかったのだ。
こんな一見ぐうたらっぽい人でもちゃんと女の人に気を遣うんだと感心したが、乃芽は今まで男だらけの城で寝ていた身。
銀時と一緒に二人で寝たって別に構いはしなかったのに。
「俺が構うからやめてマジ!殺す気か!新手の拷問ですか!」
と言うので渋々諦めた。
恐らく銀時はソファで寝ているのだろう。いつまでもそうさせるわけにもいかないし、ちゃんと寝る所も確保しないとな、と乃芽は思った。
台所の襖を静かに開けると、ソファに規則正しく呼吸する身体が見えた。
足は完全にソファからはみ出したまま投げ出されており、顔にはジャンプ。
乃芽は思わず笑う。これではまるで子供だ。
寝顔を見てみたい気もしたがやめておいた。
銀時の姿を見つめる。
人がいいんだか悪いんだかわからない瞳。子供なのか大人なのか区別のつかない態度。
しっかりしているようで気が抜けており、かと思うと不意に驚く程鋭い事を言う。
「なんなんだろうね…」
呟いた声は広く響いた。
考えても仕方がないと、朝食の準備をしにキッチンに向かう。