第3章 12~19
「乃芽に何やってるアルゥゥゥ!!!」
どべし、とマンガみたいな声を上げて銀時が吹っ飛ぶ。一拍遅れて乃芽の髪がふわりと舞った。
どうやら定春に乗った神楽が銀時に突っ込んだらしい。
「乃芽サンドイッチするなんてずるいネ!私も混ぜるアル!」
混ぜて欲しかったのか。
「チャイナぁ…今日こそ決着つけてやるぜィ」
睨み合いを始める二人。ああ、また面倒事の予感。
この隙に乃芽は離れ、見ると新八は目の前の騒ぎなどどこ吹く風でCD屋に目を取られていた。貴様。
「上等アル。コテンパンに叩きのめして…」
「神楽ちゃんっデートしよう!」
たまらず乃芽は言った。途端神楽が振り返る。
あ、かわいい。
「デート?」
「うん。夕飯の買い出しに行くから、一緒に行こう!好きなの作ってあげる」
「マジでか!私鮭茶漬けがいいヨ!」
「いいよ。もっとごちそうも作ろう」
あっという間に目の前の沖田を忘れてはしゃぐ神楽。
乃芽は沖田と銀時を見て、有無を言わせず言った。
「というわけでごめんね」
「そりゃねーぜ乃芽」
「また今度誘って。来たばかりだからまだ今日は少しごたごたしてて」
「…約束ですぜィ?」
「うん。約束」
拗ねたような顔で上目遣いに見上げてくる沖田が、あまりに子供っぽくて思わず微笑んでしまう。
武装警察真選組で1番隊隊長とはいえ、隊服を脱げばまだまだ少年。まだ甘えたい時もあるだろうに偉いな、と思う。
本人に言ったら怒られそうだから言わないけど。
催促する土方に呼ばれてパトカーに乗り込み、二人は去った。