第3章 12~19
乃芽はその一言の後の空白に怪訝そうに銀時を見上げる。
銀時はその視線から逃げるようにさりげなく目を逸らした。何言っちゃってんの俺、と自分でも思った。
乃芽仕事のきっかけが作れるいいチャンスだというのに。すんなり口が動かない。
乃芽がキャバ嬢?そこいら歩く変なおっさんやらを相手に?
美人だしスタイルいいしとっつきにくくもないし、彼女ならさぞかし引っ張りだこになるのだろう。ぴったりじゃねぇか。ぴったり過ぎて、全然気に入らない。
知らない男と話す乃芽の姿が脳裏に浮かんで不愉快な気分になった。
融通をきかせ薦めてくれないかと待っていた乃芽は、待てども銀時がなにも言わないのを見て首を捻った。
私が仕事を探していると言ってくれると助かったんだけど。しかし、言うような気配はない。
妙な沈黙に桂がいぶかしんでいる。仕方なく乃芽は自分から口を開いた。
「あの、私仕事を探してるんです」
「何? ならばここにするがいい。食事付きで送迎有り、ノルマ無し残業無しと好条件が揃っているぞ」
乃芽は微笑んだ。これは幸先がいい。
万事屋からそれほど離れていないし、いい場所だ。
話を聞いてみるだけの価値はある。
乃芽は、何も言わない銀時を振り返った。
「ねぇ銀さん。ちょっと話聞いて来てもいい?」
「やめとけ」
予想外な言葉に目を見開く。
「なんで?」
「ヅラがいる所なんざ期待できねーぞ。他当たれや」
「でも…」
戸惑ったように視線が揺れた。あまり新八と銀時に迷惑はかけられないし、早く決めてしまいたいのに。
それなのに銀時は乃芽の様子に気付いていないようにそっぽを向いている。
そんな中、桂が。
「ヅラじゃない!桂だと何度言ったら…」
「桂ァァァァァ!!!」
「わァァァ!?」
爆撃された。
2008/05/11