第1章 01~07
ノリノリで話を進めていた新八と神楽が驚いてぴたりと静かになった。
銀時は変わらずだるそうに座っている。それどころかジャンプに手を伸ばしている。
話聞く気あるのか…ってそれは置いといて。
「何を…宜しくって…私、ここに住んでいいんですか?」
「さっきからそう言ってるアル。私が銀ちゃんに頼んだおかげネ。感謝するヨロシ」
「だって…突然家に穴空けて寝ちゃったのに…働かせてくれて、それだけでも有難いのに…」
昨日まで私を取り囲んでいた城の役人は。話し掛けてくる幕府の重鎮は。
腹の探り合いをし、利益の為に腐り、表は飾って裏は泥。
親切には必ず見返りを求めていて。
私は、親切こそを疑えと教え込まれていて。
信じられない。
信じられるはずがない。
信用は口だけ。目の前の親切は明日には裏切りになっているかもしれない。
お庭番衆という仕事柄、知らぬ間に利用される事もあった。それが露見すれば、腹を斬るのは利用され罪をなすり付けられたこの私。
誰だって命は惜しい。命惜しくば利用されないよう疑い続けて生きるしかない。そこが私の生きてきた世界。
だから。
なのに。
「なのに…その上住んでもいいだなんて親切すぎる。虫が良すぎる。貴方、一体私を何に…」
「正直よォ」
低い声が、嫌な思考回路を断ち切る。
「新八は焼けた卵持ってくるわ神楽に掃除させると破壊してゴミ増やすわ定春はきたねーもんしか生まねーわで参ってんのよ。人助けと思ってやってくれや」
「…………」
冗談としか思えない。
笑いそうになったくらいだ。
人助け。
私が。
泥を濁らせるような事しかして来なかった私が。
この手が何度汚れているかもわからないのに。
そんな汚い手なのに。
私の手で。
私の手が。
私にも。