第1章 01~07
「前の仕事…お庭番長だっけ?」
「いや番衆です銀さん」
「それやめたなら、忘れろとは言わねぇがすっぱり切れよ」
「…………」
「糸の一本でも足に絡んだままズルズル引き摺ってみろォ。いつか糸がピンと張って前に進めなくなる。千切ろうにも足に食い込んで痛ぇだろうよ」
きっと抜け出せない。そう思っていた鉄の籠は、案外脆いもので。
私が扉を開ければ簡単に出られた。城の塀を越えればとても大きな解放感が私を包んだ。
ならば私の足を未だ繋ぐこの長い長い鎖も。
重たく頑丈で外れないと思い込んでいるだけで。
鎖と私とを繋いでいる足枷を外せば。
案外簡単に。
「あー…あともうひとつ条件があるの忘れてた」
「…何ですか?」
「週一…いや週二…いや週三でパフェ作れ」
甘党か、この人。
いぶかしげに見つめてみるが、本人は至って真面目。
新八も神楽も私を見つめていて、これが最終確認なんだとわかった。
城を出て、やる事は決まっていなかった。
身体に染み着いた本能から、裏の仕事でもするしかないと思っていた。
真っ当な仕事に着いて働くのはまだ億劫だったから。
人を殺して私は生きてきた。
夢にまで見た綺麗で自由な生き方をするにはその泥を落とさないといけないのに。
生きる為に、私はまた何かしら泥を被らなければいけないのかとうんざりした。
もう、いいのだろうか。泥に浸からなくても。
せめて今の泥が乾くくらいの間なら、ここにいていいのかもしれない。
ここにいてみたい。
私は微笑む。
そろそろ犯し事は終いにしよう。懺悔しましょう償いましょう。
あの日とあの子と私の為に。
私の泥は。
「お安い御用です」
神楽が2回目の猛烈タックルをかましてきた。
2008/04/10