第1章 殺し屋タヌキ
『さっきから聞いてれば私の事を犬犬言ってくれちゃってるけどね!あんなワンワン吠えるしか出来ない奴らと一緒にすんなっ!』
そう言って車のドアに飛び付くとロックを…動かない…なんでっ!!ドアをガチャガチャしてると青シャツに腰をガッツリホールドされた。
「離せってばっ!!はーなーせーっっ!!」
「わんこ君が裸のケモ耳girlになったぞ!?わんこちゃんだったのか…」
青シャツはホールドしたまま私を膝の上にうつ伏せでのせる、それでも私は諦めず手を伸ばしてドアをガチャガチャする。
「おお、尻が丸見えでいい眺めだねぇ♪」
赤シャツも全然驚いてない……。
「えっ?さっきの犬?裸の女の子に耳と尻尾が生えてる!?」
「わんこが裸の女の子になった!?スッゲーね!」
運転主の緑シャツと助手席の黄色シャツめ、まだ言うか!!
『タ・ヌ・キ・だっっ!!』
それでも諦めずドアをガチャガチャしてると緑シャツから無情な一言。
「そのロック、チャイルドロックだからこっちで操作しないと開かないよ」
なんですと……ああ…もうなんだかどっと疲れちゃった。
仕方ない、ここは落ち着いてお願いしよう。
『すみません…家に帰りたいんで車からおろしてもらってもいいですか?』
「それは出来ない」
『はぁっ!なんでっ!?』
「フッ…情況から考えて、girlはオレ達が逃がしてしまった殺し屋だろ?」
『な、なんの事だか?わからないです』
「とぼけても無駄だぞ、なんなら拷問してもいいんだが…終わらない苦痛を与え続けるのは、オレは得意だぜ!」
『ひっ!!』
怖いよこいつ…どうせ殺されるなら、苦痛とか嫌だ。
こうなったら覚悟を決めて認めよう…ああ…さようなら…長いようで短いタヌキ生だったな…。
『ごめんなさい、私が殺し屋です…だから痛い事しないで…けど、だって…故郷の山を追われて…私みたいな素性のしれないタヌキなんて、人間社会で生きて行くには…まともな仕事なんてつけないし、殺し屋でもなんでもやって、お金貰えないと生活できないんだよ?まぁ…今回は失敗しちゃったけど…』
「そうか、girlの他にもgirlみたいなタヌキはいるのか?」
『いないよ…私は元からこの力を使えた、他はただのタヌキ、人間の環境破壊やらなんやらで、住み処の山を追われて、都会の片隅で残飯でも漁ってるんじゃない?」